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島ごとに主役が変わる?インドネシアの犬猫事情と言い伝え2026.03.06

1月末に、インドネシアへ研修に行く機会がありました!そこでおもしろいなと思ったのが、地域によって見かける動物がガラリと違うことです。

というのも、バリ島ではあんなにたくさんいた犬たちが、別の島へ行くとほとんど見かけなくなり、代わりに猫をよく目にするようになるのです。この「犬派・猫派」がはっきり分かれる背景には、実はこの国ならではの宗教事情や言い伝えが隠されていました。


イスラム文化が育む「猫の聖域」

イスラム文化が育む「猫の聖域」

インドネシア全土の約9割を占めるイスラム教圏では、猫は単なる動物以上の敬意を払われています。

預言者ムハンマドの慈愛と「袖」の逸話

イスラム教において、猫は「清潔な動物」として尊ばれています。その根底には、預言者ムハンマドが、自分の服の袖で眠る愛猫「ムイザ」を起こさないために、自ら袖を切り落として礼拝に向かったという有名な物語があります。この精神が、今も島々の人々の心に深く刻まれています。

「猫を傷つけると一生不運になる」という言い伝え

現地には、非常に強い戒めとして「猫を虐げたり傷つけたりすると、その人は一生不運に見舞われる」という教えがあります。たとえ不慮の事故であっても、猫には人間と同様の丁寧な供養や配慮が必要だと信じられていることが、猫たちの安住の地を作っています。

市場や街角で見かける、境界線のない共生

例えばロンボク島などの街角では、猫たちが人間を恐れる様子もなく、市場の店先や住宅の玄関先でくつろいでいる姿をよく見かけます。人々がごく当たり前に食べ物を分け与え、猫たちがそれを受け入れる。そこには、まさに「共生」という言葉がふさわしい光景が広がっています。


バリ・ヒンドゥー文化と「守護者」としての犬

バリ・ヒンドゥー文化と「守護者」としての犬

一方で、一転してバリ島などのヒンドゥー文化圏に入ると、そこは犬たちが主権を握る世界になります。

神話に描かれる「魂の同行者」

バリ・ヒンドゥーの教えにおいて、犬は「家や村を守る大切なパートナー」です。叙事詩の中でも、天国を目指す王に最後まで寄り添ったのは一匹の犬だったとされており、犬は「死後の世界まで魂に寄り添う唯一の友」として尊ばれています。

「黒い犬は魔を見抜く」という神秘的な役割

バリでは「黒い犬は目に見えない邪気を見抜き、追い払ってくれる」という言い伝えが一般的です。夜中に犬が吠えるのは、不審者に対してだけでなく、人間には見えない霊的な存在が通り過ぎるのを警告しているからだと言われています。

道路を占拠する「村の主(あるじ)」たちの風格

バリの犬たちは、いわゆる日本の「ペット」とは佇まいが全く違います。バイクや馬車、人々が忙しく行き交う道路の真ん中で、微動だにせず寝そべっている。その様子は、飼われているというより、その土地を守る「住人」としての自負に満ちているように見えました。


互いに干渉しすぎない「心地よい無関心」

正直に言うと、最初はかなり怖かったです。日本で暮らしていると野犬に遭遇することなんてまずないので、自分の方へ向かって走ってきたときは、さすがに怖くて思わず叫んでしまいました!

しかし、次第にわかってきたのは、彼らが放つ独特の空気感です。インドネシアで感じたのは、動物を「管理」するのではなく、ただ「そこにいることを許し合っている」ような不思議な関係性でした。

人間は過剰に構わないけれど、追い払いもしない。だから動物たちも、人間に媚びる必要がない代わりに、牙を剥く理由もない。そんな「お互い深入りしない」という暗黙のルールが、おとなしいけれど凛とした、あの独特の距離感を生んでいるのだと感じました。


まとめ

まとめ

今回、犬と猫の分布が地域ごとにこれほどはっきり分かれているのを見て、インドネシアの文化の多様さを改めて実感しました。

なぜなら、訪れる場所の宗教や古い言い伝えによって、人々の動物に対する接し方が変わり、それがそのまま街の風景の違いになっているからです。もちろん、どちらが良い悪いという話ではありません。むしろ、それぞれの土地の暮らしの中に、それぞれの動物との自然な付き合い方があるのだと感じました。

犬や猫たちの姿を通して、この国の多層的な面白さに少しだけ触れられたような気がします。もし次にインドネシアを訪れる機会があれば、ぜひ「犬なのか猫なのか」に注目してみてください。その一点を見つめるだけで、その土地の信仰や人々の心が、おのずと見えてくるはずです。




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